腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
半分以上鷹司が作ったガトーショコラを目の前に、私は得意満面の笑みを浮かべる。
良い匂いに我慢できなくて、さっそく鷹司に切り分けてもらった。
「ところで、何故いきなりお菓子作りを?」
「そんなのバレンタインのために決まってるじゃない。葉澄が、料理は苦手だから奏多くんに市販品を渡すとか言っていてね。お菓子作りぐらいならあの子に勝てるんじゃないかと思ったのよ」
まあ、この調子だと同レベルかもしれないけど。
でもこのガトーショコラはすごく美味しい。甘くて、だけど濃厚なチョコレートはしっかりビターでもあって。
「……それではつまり、柳沢様に手作りのチョコレートを渡すおつもりですか?」
鷹司は、彼らしからぬぼそりとした声で何か呟いた。
「ん? 何か言った?」
変に思って聞き返すと、彼ははっとしたような顔をして首を振る。