腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め




そうこうするうちにやってきた決戦の日。



『放課後、話したいことがあるから中庭に来てくれませんか』



その短いメッセージと名前だけを書いた手紙を、奏多くんの机に忍ばせるだけでずいぶん緊張した。

冷たい風が通る中庭で、奏多くんが本当に来てくれるかという不安でいっぱいになりながら、私はチョコレートの入った紙袋をぎゅっと握りしめる。



今日は、男女問わずそわそわと落ち着かない人たちがあちらこちらに発生する2月14日。バレンタインデー。






──ではなく、その前日の2月13日だ。



今日を選んだのは別に、日付を勘違いしていたわけでも、バレンタインデー当日が土曜日だからというわけでもない。




「岸井さん?」




その声が聞こえたときは、緊張よりもホッとする気持ちが強かった。




「呼びつけてごめんなさいね、奏多くん」



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