腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め



奏多くんは意外そうに、何度かまばたきをした。

きっと、重い重い本命チョコが渡されると思ったのだろう。何と言えば後腐れなく断れるのか、今必死に頭を回していたはずだ。




「バレンタイン当日に渡すんじゃ本命っぽいでしょ? だから勘違いされないように今日持ってきたの」


「そう、なんだ……」


「それと、これは葉澄への友チョコも兼ねてるから、一緒に食べてね。あの子宛てのメッセージカードも挟んであるけど心配なら内容を確認してもらって構わないわ」


「ああ、うん」




奏多くんは半分押し切られるようにして、ようやく紙袋を受け取ってくれた。そして、そっと中をのぞく。


渡したのは、──わざわざ取り寄せた、有名パティシエのトリュフ。

葉澄が欲しがっていた、一箱7,000円のあれだ。

ちなみに葉澄へのメッセージカードには、高かったんだから調子に乗るな的なことと、奏多くんと一緒に食べてね的なことが書いてある。警戒せずとも悪口なんて書いてない。



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