腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「鷹司っ!? あ、あんた何でいるのよ!」
「忍び込みました」
「『何当たり前のことを』みたいな顔するんじゃない!」
こいつ……声掛けてこないだけで、最近もちょくちょく学校の敷地内に忍び込んでるわね。じゃないとこの手慣れた感じに説明がつかない。
「無事、柳沢様にチョコレートを渡すことができたようですね。受け取ってもらうためなら手段を選ばない、とおっしゃっていましたが、これでよろしかったのですか?」
「もちろん」
私は髪をかき上げながら、胸を張って答えた。
バレンタインデーの前日に渡すことで、本命チョコでないとを強調すること。さらに葉澄への友チョコも兼ねること。
これが、奏多くんにチョコレートを受け取らせるための作戦。
「貴方はバレンタインチョコを渡せと言っただけで、本命を渡せなんて一言も言っていなかったもの。これでいいんでしょ?」
「ええ。お見事でございました」