腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
その答えを聞いて、鷹司は困惑気味に眉をひそめる。
「それなら……」
「だけど他に手作りを渡せる例外があるとすれば、相手が家族のとき? あとは、主人が従者に贈るとき、とかね。……てわけでほら、これはあんたに」
鞄の中に入れてあった、もう一つの紙袋。大きさは奏多くんに渡したものの半分ぐらい。
家に置いておいたら見つかると思って、今日一日持ち歩いていた。
「ガトーショコラ、小さなカップに入れて作ってみたの。頑張ったんだから感謝しなさいよね」
「……まさかわたくしに、ですか?」
「ふふ、良い反応してくれるじゃない」
私からチョコを渡されるのは本当に予想外だったらしい。
ありえないものを見たというように目を見開く鷹司の顔が大変愉快だ。
「言っておくけど、当然本命チョコなんかじゃないからね! バレンタインデーにあやかった主人からの施し!」