腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め




鷹司は貴重な美術品でも扱うかのように、丁寧に紙袋を受け取った。

……かと思うと、反対の手で顔を覆って天を仰いだ。




「え、何!?」


「すみません。少し自己嫌悪に陥りまして」


「どういうこと?」




鷹司は少し決まり悪そうな顔をする。

いつも感情を隠すかのように笑顔を浮かべている男にしては珍しく、弱っているように見える。




「いえ、柳沢様にバレンタインチョコを渡すように、と自分で課題を出したにもかかわらず……。いざお嬢様が彼のためにチョコレートを手作りしているのだと思うと、どうも嫉妬心を抑えられずにいたもので」


「なっ」


「なので、柳沢様宛てのチョコレートに軽い毒を盛ろうかと本気で検討しておりました」


「それはさすがにシャレにならないわよ!? というか軽い毒って何!?」




一瞬、ちょっとドキっとしちゃったじゃない。

全然いつも通りの鷹司だった。おかげで冷静になった。




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