腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「まあ、貴方に手伝ってもらったときほど上手く作れなかったけれど、せいぜい大切に食べることね」
「ええ、大切に飾っておこうかと」
「食べろって言ってるでしょ」
「冗談でございますよ。心配なさらずとも、たとえ砂糖と塩を間違えていても美味しく頂きます」
「さすがにもう同じ間違いはしないわよっ!」
あの日の間違いはもう忘れてもらいたい。
私が恥ずかしさを誤魔化すように大股で歩き始めると、鷹司はそのまま一歩後ろを付き従う。
……かと思えば、くいっと手を引かれた。
「危なっ」
転ぶかと思ったけれど、手を引いた本人がそんなことをさせるはずがなく。
私のことをすとんと抱き留めた鷹司は、耳元に顔を近づけてささやいた。
「ありがとうございますお嬢様。……ですが貴女は、いったいどれだけわたくしの心をかき乱す気なのでしょう?」
「ひゃっ……なっ……」