腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
◈お嬢様がお好きな香りを、教えていただけませんか

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高校一年生最後の一ヶ月は目まぐるしく過ぎていった。

期末テストに三年生の卒業式。課外授業の期間が終われば春休み。


春休み中はお父様の命令で、嫌々小さなパーティーに参加したりもした。

サボる気満々で隠れていたのに、いつものごとく鷹司にあっさり発見されて強制連行されたのだ。あの男の雇い主はあくまでお父様ということね。腹立つ。



ちなみにホワイトデーには、そんな腹立つ執事から──美しい香水瓶を贈られた。

片手にすっぽり収まってしまうぐらい小さな瓶。中身の香水は入っていない。

桃色がかった薄いガラスに繊細な模様が細かく入っていて、ぼんやりしているときについつい時間を忘れて眺めてしまう。





──四月に入って数日目。新学期初日の朝。

今日も髪のセットをしてもらいながら、その香水瓶をもてあそんでいた。




「ねえ、何で瓶だけなの?」




もらった日にも同じような質問をしたけれど、懲りずにまた尋ねてみる。


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