腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
葉澄に連れて来られるようにして掲示板の前に立った私は、やっと自分の目でもクラス名簿を確認した。
クラスは一年生から引き続き4組。
“く”と“け”で始まる苗字の人がいなかったので、岸井まいと香田葉澄の名前は並んでいた。
そして一年生のときに常に私を取り巻いていた友人たちは──全員、別のクラスになっていた。
「ふうん」
実際にその事実を目の当たりにすると、落胆よりほっとする気持ちが勝った。
「席替えするまでは前後だね~。あ、でも一番前と一番後ろに別れちゃう可能性はあるか。前後だといいな!」
そして、隣で無邪気にそんなことを言う葉澄を見て、思わずふっと笑みをこぼした。
「そうね、前後だといいわね」
「あ、デレた」
「は?」
「やば声に出てた……ううん、何でもない!」
葉澄は慌てたようにぶんぶん首を振った。
するとそのとき。
誰かが葉澄の背後にやってきて、飛びつくようにして彼女に抱き着いた。