腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
言われなくたって、もうそんなことをするつもりはない。
とはいえそれを言ったところで信じてもらえないだろう。そう思うと静かに見つめ返すことしかできない。
葉澄も、私と中山さんの顔を見比べて狼狽えている。
だけど、思わぬところから助け船が出された。
「中山さん。そんなに心配しなくても、岸井さんは大丈夫だよ」
「あ、柳沢くん!」
葉澄の顔がぱっと明るくなる。
私たちのいる方へやってきた奏多くんは、とても自然な手つきで葉澄の肩を抱き寄せた。
「ハス、岸井さんと同じクラスになれて本気で嬉しいみたいだし」
「うん!」
「ていうか、俺と離れたことをもうちょっと悲しんでくれないかな?」
「あはは、だって柳沢くんは理系だから離れるのわかってたし。それにどうせ休み時間に来るでしょ? って……いてて」
奏多くんは葉澄の頬をみょんと引っ張る。
わかりやすくイチャつきだした二人を見た中山さんは、にやにやして「あ、そう。あんたらほどほどにしなよ」と言い残すと、新しいクラスへと向かっていった。