腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
この二人が放課後図書室で勉強していることも、今日図書室が使用禁止になることも、私は前から知っていた。
そして今、会話が期待していた方向に進んでいる。
よし、大丈夫よ私。
自分にそっと言い聞かせる。
自然に。何でもない風に。軽く軽く。
「ね、ねえ!」
……声はしっかり裏返ってしまった。
だけどこれで二人の注目がこちらに向いた。後戻りはできない。
「う、うちを使わせてあげても良いわよ」
「え?」
「だから! この学校の図書室にあるような参考書ならだいたいうちにあるから、今日は図書室の代わりにうちで勉強させてあげても良いって言ってるの!」
ああもうやだ!
まるで私が自分の家に遊びに来てもらいたくて仕方ないみたいじゃない。
私は顔が熱くなっていくのを感じながら、数週間前のことを思い出す。
『お嬢様、新たなミッションを与えます。……ご友人を屋敷へ招待なさってください』
最初は何をふざけているのかと思った。