腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「この部屋を使いましょう」
二人を通したのは自室ではなく、机と椅子がセッティングされたシンプルな洋室。
面白みのない部屋だけど、テスト勉強のためと言った手前しかたない。
それでも二人は──というか葉澄は、椅子の座り心地が良いだとか天井が高いだとか、いちいちはしゃいでくれる。ちょっと嬉しい。
「紅茶をお持ちしました。砂糖とミルクはいかがいたしましょう」
「私はストレートで。柳沢くんの分はミルクなし砂糖ちょっと多め、でしょ?」
「うん」
「かしこまりました」
言われた通りにそれぞれの紅茶を準備し終えた鷹司に、私は適当な参考書を書斎から見繕って持って来るよう頼む。
鷹司が一旦部屋を出たのを見届けて、私はちょっと行儀悪く頬杖をついてにやりと笑った。
「見せつけてくれるじゃない」
「へ?」
「紅茶よ。『柳沢くんの分はミルクなし砂糖ちょっと多め、でしょ?』ですって。彼氏の味の好みはばっちり把握してるって?」