腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め



私の不満には気付かないフリをして、鷹司は授業を始める。




「──つまりこの問題は、ややこしそうに見えて実は全てこの公式の応用でございまして……」




そしてわかりやすい鷹司の解説は、悔しいことに二人に好評で。

解説が終わると、奏多くんはともかく葉澄までも「やっと理解できたから忘れないうちに問題解いてみないと」とやる気を出して問題集を解き始める始末。




「……」




面白くない。


すっかり集中が切れてしまって、お茶を飲もうとカップに手を伸ばすも、中身は既に空だった。

顔を上げ、部屋を見渡してみる。授業を終えた鷹司は、いつの間にか部屋からいなくなっていた。




「ちょっと着替えてくるわね」




私は葉澄と奏多くんにそう声をかけて、そっと部屋を出た。


ああ疲れた。やってらんない。

せっかく勇気を出して友達を家に呼ぶってミッションクリアしたのに。


というか、鷹司はどこにいったのかしら。

いつもなら、私が紅茶を飲み切る頃にはちゃんと新しいお茶を準備して待ってるのに。


< 148 / 251 >

この作品をシェア

pagetop