腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「っと、もう時間だ。すみません、これから予定がありまして、僕はこれで失礼します。……まいさん、また近々ゆっくりお話ししましょう」
「えっ……ええ……」
顔を引きつらせながらそう応じるのでいっぱいいっぱい。
御園さんは途中複数人に声をかけられたりしつつ、最後まで人の良さそうな笑みをくずさないまま会場を去っていった。
「きっしーさんただいま! ねえどうしよう、本物の麗華ちゃんあんなに間近で見ても毛穴がなかったんだけどすごくない ……ってあれ? どうしたの?」
御園さんが出て行ったのと入れ替わりで戻ってきた幸せそうな表情の葉澄は、すぐに私の異様な雰囲気に気付いて目を白黒させる。
だけど残念ながら、彼女がいない間に起こった出来事を丁寧に説明できるほどの余裕は、今の私になかった。