腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「鷹司。貴方は、私が御園さんと婚約することについてどう思う?」
「雄一様は歴史ある御園グループをあの若さで運営する大変優秀な方ですが、気取ったところがなく優しい心の持ち主です。年齢はお嬢様と10歳ほど離れておりますが、わたくしの所感としてはお嬢様とは話が合うのではないかと。結婚相手として好条件でしょう」
そう語る声は実に穏やかなものだった。
御園さんと半年間の付き合いがあるとのことだから、彼の人となりについては疑う余地はない。
……だけど、聞きたかった言葉はそれじゃない。
私は思わず拳を握って立ち上がった。
行き場のない感情にその手を震わせながら鷹司を見る。
見つめ返してくる執事は、全く感情の読めない冷めた目をしていた。
「……ちょっと一人にして」
「承知いたしました」
バタンと扉の閉じる音がした後、私は目の前のドレッサーに突っ伏した。
今私がこんなにイライラしているのは、落ち込んでいるのは……
鷹司が私の婚約に何一つ反対する様子を見せなかったからだ。
「噓つき」