腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「許すわけないじゃない!」
ふざけるな。言わせておけば勝手なことを。
「何なのよあんた、病み上がりの主人に対してずいぶんと饒舌ね。いつの間にか一人称『俺』になってるし」
「……あ」
「いやまあそれはどうでもいいけど! 普段私の考えてること先読みするくせに、こういうことに対しては鈍感なわけ? ラブコメの主人公レベルだわ!」
「……どういう意味でしょう」
「あんたに御園さんとの婚約を賛成されて、私がどれだけショックだったか想像できてないわけ?」
枕もとのクッションを一つ手に取った私は、鷹司の顔面へ向けて力任せに投げつける。
もろに顔面に当たることを期待したけれど、鷹司は私に掴まれていない方の手で軽々と受け止めた。
だから代わりに、すぐさま胸ぐらを掴んで引き寄せた。
「いい? 耳かっぽじってよく聞きなさい。私は確かに、御園さんのことを好きになりたいと思った。あの人のことを好きになれたら幸せになれる気がしたから。……だけどどこで何を間違ったのか、実際に私が好きなのは鷹司、貴方なのよ!」