腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
私は慌ててベッドから下りて、ドレッサーの鏡をのぞき込む。
見れば白い肌に一か所だけ、ぽつんと不自然に赤みがさしている。
いわゆるキスマークというやつだ。
「何してくれんのよ!? これじゃ学校も行けないじゃない!」
「マフラーでもしておけば隠せますよ」
「今もう夏だっての!」
「冗談です。絆創膏で十分隠せますし、心配なさらずとも三日もすれば消えるかと」
「あ……そう……」
「何ならもうあと2、3か所付けておきましょうか」
「怒るわよ」
三つも四つも絆創膏を貼るのは不自然すぎる。
というより、そもそも先ほどのをそう何度もされては心臓がもたない。
「ああもう! いいから、あんたはさっき言ってたほうじ茶のミルクティーでも持ってきなさい。……待って、さっきはスルーしちゃったけど、ほうじ茶に牛乳を混ぜるってこと? それどんな味!? ちゃんと美味しいんでしょうね!?」
「さあ、それは飲んでみてのお楽しみでございます。今すぐお持ちしましょう」
「ちょ……不味かったら承知しないからね!」
そんな私の叫びは、静かな笑顔で返された。