腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「まあいいわ、こっちで適当に見繕ってあげる。その代わり、私は明日から葉澄の家に泊まるってことにしてあるから、もしうちの者から何か連絡があったら話合わせてちょうだい」
「え、てことはニューヨークまで行くの家族にも秘密なの!?」
「家族っていうか、使用人たちにね」
むしろお父様だけならそんな小細工しなくたって、私が家にいようがいまいが気付かないだろう。
そして逆に、もう一人の家族、累にはちゃんと話を通してある。
偶然にも今回の目的地、ニューヨークで岸井家跡取りとしての教育を受けている弟。
鷹司の行方を突き止めるのにも、私のニューヨーク行きにもかなり力を貸してくれた。
「まあとりあえず、それぐらいならお安いご用だよ」
「悪いわね」
「ううん。それにしても……恋する女の子って、強いね」
恋する女の子。
葉澄のその言葉に、私は何度かまばたきする。
それから、短くなった髪を撫でつつ、ふっと笑みをこぼした。
「まあね」