腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
恐らく金銭関係だか跡継ぎ関係だかのトラブルなんだろうな、と想像する。
例えば、親の派閥が権力争いに負けたとか、そういう感じの。御園家レベルの家であればそう珍しい話でもない。
「きっとその状況に耐えられなくなったんでしょうね……従妹は誰にも言わずに姿を消してしまいました。今でも音信不通です」
「え……」
「それでもきっとどこかで幸せに生きているだろうと信じています。……ただ、彼女の立場を守ってあげられなかったことを僕はすごく後悔しているんです。だから、いなくなった当時の彼女と同じくらいの歳のまいさんを見ているとつい甘やかしたくなってしまう」
どうです、自己満足でしょう? と言って、御園さんは笑った。
「つまり御園さんにとって、私は親戚の女の子の身代わりだったというわけね」
「気を悪くされました?」
「まさか。むしろ御園さんは良い人すぎて怖いぐらいだったから、そういう話なら納得したわ」