腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め



私がそう言うと、御園さんはほっとしたように息を吐いた。




「まあとにかくそういうことですから、婚約の話は僕から岸井社長に断りを入れておきます。立場もあるので、一応顔を立てさせてください」


「もちろん。何から何までありがとう」


「結婚はしなくても、どうか良き友人としてこれからもよろしくお願いします」




信号が変わる。

車を発進させながら、彼はちょっといたずらっぽく付け加えた。




「とはいえ、出会うのがもう数か月でも早かったら、そんなこと言ってなかったかもしれませんけど」


「え?」


「本気でまいさんを好きになってしまう前で良かった、ということです。そうなったらむしろ、鷹司さんに会いに行こうとするのを全力で阻止していたでしょうね」


「あら光栄ね。御園さんともあろう方に好きになってもらえる可能性があったなんて」




お世辞だろうと思って笑ったけれど、御園さんは首を振って力強く言った。




「当然です。まいさんは、ご自身で評価しているよりずっと魅力的な女性ですから。……だからどうか、自信を持って」



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