腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
──なんて予想は甘かった。
「どうやらわたくし、貴女に一目惚れしてしまったようなのですが……どうすればよいでしょう」
「……は?」
「ああ失礼。何度か見てから好きになったので、三目惚れぐらいでしょうか」
いや知らないけれど。初めて聞いたわよ三目惚れ。
大真面目にわけのわからないことを言いだした執事に、文字通り開いた口が塞がらない。
「本気で言ってるの?」
「もちろんでございます」
「わ、私のことが……す、好きだって言うわけ?」
「先ほどからそう申しております」
いやいやいやいやいやいや……
好きって、つまり私の奏多くんへの気持ちと同じようなものってことでしょ?
確かに私は美人だ。だけどこの性格だから、昔からモテた試しがない。
「仮に本気だとしたら、よっぽど物好きなのね」
「そうでしょうか」
「『何度か見てから好きになった』って言ったわね。つまりそれは、私のことをこっそり監視していた上で好きになったってことでしょ? 顔が好きとかならまだしも、性格込みで好きだというならとんだ変人よ」
「おや、ずいぶんとご自分のことを卑下なさいますね」