腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
その声は、きちんと鷹司に届いたらしい。
彼ははっとしたように顔を上げ、こめかみの辺りを押さえる。
「この私にこんな手間を掛けさせるなんていい度胸じゃないの、鷹司?」
今度は日本語に改め、先ほどよりも一回り大きな声で呼びかける。
そこでやっと私の存在を認識したらしい。
鷹司は大きく目を見開いて、絞り出したような声で言った。
「お嬢、さま」
良かった、ちゃんと会えた。
私はそっと息を吐いて、鷹司の方へ駆けて行く。
怒らないといけないのに、ほっとして自然と頬が緩んでしまう。
「あ、そうそう。あんたのせいで髪こんなんにしちゃったわけだけど、感想は?」
まずはこれを聞いてやるんだった。
鷹司は唖然としたまま答える。
「雰囲気が変わって、こちらも大変お似合いでございますね。お綺麗です」
「なっ……あ、そう……。まあ、当然ね」
困らせてやる気でいたのに、当然のように褒められては逆に反応に困る。
ええっと、他に言うことは……。
色々言いたいことはあったはずなのに、いざ目の前にすると言葉が出ない。