腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
鷹司は、そんな私のことをおもむろに抱き寄せた。
そっと存在を確認するかのように、優しく背中に手を回される。
「ちょっと鷹司っ」
「二週間ぶりのまい様を、せっかくなので少し堪能させてください」
「……言い方が何かやだ」
「味わわせてください」
「あんま変わってないわよ馬鹿」
こういうやりとりに日常を感じて安心しちゃう自分が嫌だ。
私はむっと頬を膨らませながら、鷹司の腕に精一杯抵抗する。
「というか! あんたは! 私に色々と説明する義務があるんじゃないの!?」
「……そうですね。では少し場所を変えましょうか。どうぞこちらへ」
鷹司は静かに私の手を取って、パーティーでエスコートでもするかのように、ゆっくりと歩き出した。