腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「どうぞお入りください」
「ええ」
促されるがままに部屋の中へ入ろうとした私は、ふと足を止めた。
……これ、入っていいのかしら。
私が躊躇っているのに気がついて、鷹司はくすりと笑う。
「もしかして警戒していらっしゃいますか?」
「……あんたのこれまでの言動を思うと、信用しろっていう方が難しいわ」
「それはそれは。男の部屋に入ろうというのです、警戒心を持つのは良いことですよ」
「あんただから警戒してるのよ?」
「ですがご安心を。貴女が高校生のうちは手を出すつもりはありません。さすがのわたくしも、貴女のお父上からの心証をこれ以上悪化させたくないので」
「……それもそうね」
全く手を出されないとなるとそれはそれで寂しいけど……という思いが浮かびかけたので、慌てて打ち消した。
嫌だ、思考がちょっとこいつに影響されてる。