腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
かあっと顔が熱くなる。
私にとってすっかり馴染みのものになった、ウッディムスク。鷹司が使う香水の匂い。
「う、自惚れないで! ムスク系全般が好きなのよっ! あんたが使ってるこの香水も嫌いじゃないからもらってあげるけど!」
「お気に召したのなら良かったです」
悔しい悔しい悔しい!!!
全部見透かしてるみやいな顔しちゃって、こいつは本当に……!
私は気持ちを落ち着けるべく何度か深呼吸する。
そうするうちに少しだけ余裕を取り戻して、一つ思い出した。
「そういえば私もあんたに渡そうと思ってたものがあるのよ。何かプレゼント交換みたいになっちゃったわね」
「わたくしにですか?」
「えっと……あ、あったわ」
私はバッグの中を探って、小さな黒いケースを取り出した。
蓋を開けると、そこには黒いオニキスがあしらわれたシンプルなピアス。
買い物をしていたときに偶然目に止まって、何となく購入したものだ。
「お兄さんの形見だか何だか知らないけれど、同じアクセサリーばかりは飽きるでしょう? たまには変えてみなさいよ」