腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め




「……まい様。そう熟読せずとも、手順としてはそこまで難しいものではございませんよ?」


「うるさいわね黙ってなさい」




ピアッサーに附属していた説明書を睨むこと約十分。

確かに、使い方が書かれたイラストは実にシンプルだ。

だけど、この小型の器具に入った針が耳を貫通するなんて、想像しただけで恐ろしい。




「参考までに聞くけれど、これって失敗したらどうなるの?」


「そうですね、よくあるのは化膿したり、位置が悪ければ穴の部分から裂け……」


「やっぱりいいわ聞きたくない」


「そこまで心配なさらずとも、わたくしは貴女に消えない跡を刻み込んで頂けるだけで興奮……いえ、幸福ですよ」


「軌道修正間に合ってないわよ。一文字違うだけでずいぶん印象違うじゃない」




はあっと大きくため息をつく。

……おかげで変な緊張がとけたけど。




「よし、腹は括れたわ。そこに座りなさい」




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