腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
ソファーでは安定しないので、床に座ってもらい手鏡を持たせる。
印を付けるのは本人にやらせたから、私はただそれに合わせてピアッサーを握ればいいだけ。
「絶っっっ対に動かないでよ?」
私は、何度も印や角度を確認しながらピアッサーの位置を調整する。
そして、一度大きく深呼吸をした。
「い、いくわよ」
「はい」
思い切ってピアッサーを握りこめば、ガチャンという想像より大きな音がする。
いつも簡単には表情を崩さない鷹司が、わずかに眉を動かした。やっぱり痛いらしい。
そっとピアッサーを外すと、きちんと狙った位置にファーストピアスが付いていている。
同じことを反対の耳でもどうにか終えて、私はほっと息をついた。
「完璧。我ながら天才だとおもうわ……」
──そんな自画自賛の言葉は、最後まで続かなかった。