腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「だから言ったじゃん!きっしーの方が断然上だって!」
「柳沢くん、きっとすぐ目が覚めるよ!」
さきほどの「思ったよりブスじゃないの」発言で友人たちは大いに盛り上がってみせる。
私はそれらの声に「そうよね」と軽く答えつつ、目の前の女子生徒を改めて見た。
彼女の名前は香田葉澄。
あんな言い方をしたけれど、実際はまあ結構可愛い方だ。
顔立ちでいえば、私は自分でもかなり美人だという自覚はある。
ただしそれはキツめの美人で、香田葉澄のような清楚でふわふわした雰囲気には、逆立ちしたってなれやしない。
奏多くんの好みが、こういう私と全く違うタイプだという事実も悔しい。
……とまあ観察はこれぐらいにして、私は今後の手順を頭で復習する。
この後は、香田葉澄を体育倉庫に閉じ込める手はずになっていた。
この体育倉庫周辺は、運動部の活動がない日は人の気配がなく不気味な雰囲気の場所だ。