腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め



私はちょっと息を吸って、考えておいた台詞を吐き捨てた。




「香田さんがちゃんと冷静で正しい判断ができるよう、ここでじっくり考えさせてあげる」




同時に、彼女の肩を力一杯押した。

彼女がよろけるのを見て、素早く倉庫の扉と鍵を閉める。




「うふふ、まあ明日の朝になれば朝練に来た運動部にでも開けてもらえるんじゃない?」




扉に向かってそう言って、私は自慢のウェーブヘアをかき上げながら踵を返した。

それを見た友人たちは手を叩いて喜ぶ。




「あっはは、きっしーやっぱ最高!」


「見たぁ? 香田のあの顔!」




私はその様子を見て


──こっそり安堵のため息を漏らした。



よかった。今回も間違えなかった。



私の取り巻きのようになっている友人の数は多い。

そしてそんな彼女たちは、こういう私の悪女っぷりを見るのが楽しくて、私の近くにいる。

だから、この子たちを繋ぎ止めておくためには、期待される“悪女・岸井まい”でいる必要があるのだ。



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