腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め




教室に戻ってきた私たちは、罪悪感なんてものはまるでなしに楽しくおしゃべりに興じた。

そして友人たちは、先ほどの香田葉澄の様子がよっぽど面白かったらしい。何度も繰り返し、声高に彼女のことを話しつつ大笑いする。


──そしてそんなおしゃべりには、数十分ほど経った頃、ようやく飽きたようだ。



「じゃあねきっしー、また明日」


「ええ、また明日」




電車や徒歩で通学している友人たちがバラバラと帰り始めた。


だけど私は……彼女たちがいなくなった後も席を立たずに一人教室に残っていた。

車で送迎してもらっているから、それはいつものこと。



「……」



だけど、しばらく経ってから鞄を持って立ち上がった私は、送迎の車が来る正門へは向かわなかった。

代わりに周囲の目を気にしつつ、まっすぐある場所へ足を進める。


ある場所──約一時間前に香田葉澄を閉じ込めた、体育倉庫だ。


呼び止めたとき香田葉澄は掃除中だったらしく、手ぶらだった。つまり携帯を持っていない可能性がある。


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