腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
香田葉澄は私が不機嫌なのを感じ取って、これ以上この話題には触れないことを選んだらしい。
「ええと、それでこれは何の行列?」
「これは……」
お化け屋敷よ、と答えようとした瞬間、トンと軽く背中を押された。
驚いて視線だけ鷹司に向けると、彼は薄く笑みを浮かべながら目配せしてきた。
……まさか、今が香田葉澄と和解するチャンスだとでも言いたいの?
「愛され系悪役令嬢化計画」一つ目のミッション。
学校にいると二人きりになる機会がないからと、全く達成できる気配がなかったけど……確かに今なら。
私は目を回しそうなぐらいぐるぐる考えた後、なるようになれと香田葉澄の手を引っ張り列に引き入れた。
「ちょうどいいわ。あなたも入りなさい」
「え!?」
この人突然何を言いだすんだ、という風に目を見開く香田葉澄。
奇遇ね、私も自分自身の行動がちょっとよくわからないわよ!