腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め




「もうお化け屋敷はごめんだわ……」


「同じく……」



お化け屋敷の中は阿鼻叫喚をきわめていた。

噂に違わぬクオリティーの高さ。叫び疲れた。

近くの壁にもたれかからずにはいられないぐらい体力を奪われてしまった。



「……ねえ、香田葉澄」



だけど私は、疲れて深く考えられないぐらいの方が素直になれるのかもしれない。



「その……前体育倉庫に閉じ込めたの、悪かったわね。わざわざ人が来る可能性が低い日を選んで。さすがにやりすぎだったわ」



プライドが邪魔してなかなか言い出せなかった謝罪の言葉が、案外あっさりと出てきた。



「あ、ああ……前の……」


「あれから一時間後ぐらいに、様子見に行ったのよ。そしたら何か鍵開けられてて」


「うん。柳沢くんに助けてもらえたから」


「そう。良かったわね」



恋人の窮地に駆けつけるなんて、やっぱり奏多くんは王子様ね。

不思議と、嫉妬心はほぼ芽生えなかった。


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