腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「断るわ」
ズバッとそう言えば、見るからに不満そうにされる。
何よ当然でしょ? そんなに安い女じゃないんだから。
と言いつつ、私は一回り声を小さくして付け足した。
「でも……もうしょうがないから“きっしー”呼びは許してあげるわ、葉澄」
「本当!?」
ああもう。そんなに嬉しそうにされるとまたまた調子が狂う。
葉澄はにこにこ笑みを浮かべたまま、「じゃあ私そろそろ行くね」と言って元気に走り去って行った。
残された私は一人、ぼうっと空中を見つめる。
そしてそのまま言った。
「ねえ、どうせその辺の陰で見てるんでしょ。もう他人のフリやめてあげるから出てきなさい」
予想通り、鷹司は柱の陰から姿を現した。
何だかんだ、こいつのやりそうなことがちょっとわかるようになってきたわね。全くもって嬉しくないけど。
「ありがとうございます。お嬢様に口をきいてもらえないという状況が寂しくて寂しくて……そろそろ一周回って興奮しそうでした」
「適当なこと言ってるんじゃないわよ変態」