腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
「いるわよ。お父様が勝手に雇ったの。大迷惑」
『でもなんかすごい執事なんでしょ? 有名な執事学校を最年少で卒業したとか、各国の大富豪の家を渡り歩いてきただとか。どこかの王家に仕えたことがあるとか』
「は!? 王家に仕えたことあるはさすがに嘘でしょ」
『まあ都市伝説みたいなものだよ』
都市伝説って。
内容自体は嘘でも、都市伝説ができてしまうぐらいに名が知られているのは本当なのだろう。
私はちょっと声を潜めて聞く。
「ねえ、鷹司ってそんなに有名なの? ちなみに、他にはどんな伝説があるのよ」
『うーん、一番よく聞くのは、“執事鷹司を雇えば、その家が抱えた一番の問題を必ず解決してくれる”っていうのだね』
「その家が抱えた一番の問題?」
『そう、例えば……ある家の新しい当主は、若いせいで親戚や関係者から舐められてたんだけど、鷹司さんが数か月仕えただけで、その当主の地位を盤石なものにしたらしい』
「へえ」
『また他の家では、どうしようもない女好きだった跡取り息子をあっという間に改心させた……とか』