腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め



「何をお召し上がりになりますか?」


「お腹すいてない」


「では、ブランマンジェなどはいかがでしょう。大きさもそこまでないそうですし、食べやすいのではないかと」


「ふうん。じゃあそれにするわ」



その食べ物がどんなものか全くわからなかったけれど、とりあえず知ってるふりをしてうなずいた。

なんか変なもの出てきたらどうしようかしら。結構不安だ。




「貴方は何頼むの?」


「いえ、わたくしは結構です」


「あのねえ、前から言ってるわよ。私は自分だけが食べてるところ見られるの好きじゃないの。落ち着かないから」


「くっ……」




鷹司が苦し気に眉を寄せるのでギョッとする。




「な、何よ」


「いえ。『お嬢様の口から発されるお声は、吐息であっても聞き逃しません』でお馴染みのわたくしとしたことが、失念しておりました」


「お馴染みじゃないわよ変態」


「では、アッサムティーを頂きます」




なんだつまらない。

何か頼ませれば、秘密主義のこの男の食の好みぐらいわかるかもしれないと思ったけど、甘かったようだ。飲み物だけじゃあ弱い。


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