腹黒執事は、悪役なお嬢様への愛が強め
そう言い残して部屋を出ていこうとする鷹司。
それを私は思わず呼び止めた。
「待って。こっちに来て」
「……はい」
鷹司は私を一人にしてくれようとしたみたいだけど、どちらかといえば話がしたかった。
胸のざわざわするこの感じを、どうにか言語化したかった。
「奏多くんが葉澄と付き合ってるって、話には聞いてた。理解もしてた。……だけど思えば、二人が一緒にいるところってちゃんと見たことなかったの」
「お嬢様はあのお二人と別のクラスですから、そういうこともございましょう」
「だから、クリスマスイブなんて特別な日に二人だけで出かけて、いかにも恋人同士って感じで仲良さげなの目の当たりにして……こう、だいぶ動揺しちゃって」
好きな人の、完璧な王子様とは少し違った、年相応の男の子らしい顔。
彼女のことが愛おしくてたまらない……と思っているのが傍から見てもひしひしと伝わってくる顔。
絶対に私に向けられることはない顔。