翡翠の紋章

第21話

粉雪が舞い散る樹氷エリアに
5人は、ホワイトドラゴンの前に
立ちはばかる。

魔法の杖を持ったソフィアは、
フィンレーに『ハードバリア』を唱えた。

ハードバリアは、
魔法を跳ね返す効果がある。
その魔法を唱えた瞬間、
センサーのように反応した
ホワイトドラゴンは、
ソフィアに向かって冷気を吹いた。

ソフィアの全身が氷に包まれた。

フィンレーは、ソフィアの体に
手を添えて
氷を溶かす『ディゾルブ』を唱えた。
瞬時に溶かすことができた。

「レクエペ!ケラット!
 準備はいいか?」

「おう、任せろ。」

「私だってやるわよ!」

 フィンレーは、剣を振り上げて
 魔法を唱える。
 標的はドラゴンの口元を炎魔法で
 溶かした。
 ドラゴンの口がむき出しに
 なったところに
 小人の2人は、ジャンプをして、
 ドラゴンの口の中から体の中に
 入って行く。

 ドラゴンのカウンター攻撃で
 冷気がフィンレーに
 飛んできたが、魔法とみなした
 『ハードバリア』が
 フィンレーの体を守ってくれた。

「あぶねぇ。バリアしててよかった。」

「あの2人、大丈夫?」
 
 スカーレットが指さして答える。
 
「大丈夫、大丈夫。
 短剣持ってるから、
 それで攻撃してもらうってことで。
 ドラゴンの攻撃センサーは目から
 発してたみたいだから体の内側は
 安全ってことだ。」

「そうなんだ。
 よく見てたね。」

「赤く目、光ってたんだよ。
 気づかなかった?」

「全然わからなかったよ。」

「あとは、小人の2人に頑張って
 もらって。
 俺たちは休憩してようぜ。
 こっちから攻撃したら
 凍っちゃうから。」

「なんだか、申し訳ないけど、
 そうするしかないみたいね。」

 すると突然、花火が上がったかの
 ようにバチンバチンと火花が舞った。

 大きなホワイトドラゴンに
 まとわりついていた
 氷がすべて溶け始め、
 砂のように体全体が消えていった。
 
 小人の2人が空中からそっと
 ジャンプして、
 地面に落ちた。

「やったね。大成功!」
 
 グータッチして喜んだ。

「あれ、何か落ちてる。」

 ビー玉のように小さな宝石が
 ホワイトドラゴンがいた場所に
 落ちていた。
 水色のアクアマリンのようだ。

「それが、
 ドラゴンを召喚できる宝石だ。」

 オピンニクスが言う。

「え?!うそ。マジで。
 ラッキー。
 俺、つけていいかな。」

「フィンレーはオピンニクス
 つけてるから無理よ。
 召喚獣は1人につき
 1体だけなのよ。」

 ソフィアが説明する。

「そしたら、僕つけてもいいですか?」

 レクエペが手をあげた。

「ち、小人のくせにぃ~。」

「フィンレー、
 そういうこと言わない!」
 
 ソフィアが注意する。

「そうね。
 ドラゴンを倒してくれたのは
 小人の2人の力だし、
 レクエペに持ってもらった方が
 いいわね。」

 スカーレットは腕を組んで話す。

「ありがとうございます。」

 レクエペは、短剣の柄あたりに
 宝石をはめた。
 これで、戦いの時に
 ホワイトドラゴンを
 呼べるようになった。

「力強い味方が増えてよかったわね。
 これで、レッドドラゴンも
 スムーズに倒せるわ。
 道のりは険しそうだけど…。」

 スカーレットは、
 赤く広がる火山の方を見ていた。

 ここからだいぶ遠くになる。
 草原をさらに超えた先にある。
 歩いて行くと何日もかかりそうだ。

「背中に乗るといい。」

 オピンニクスが察して、
 体をかがませた。

「寒い中、悪いね。
 サンキュー。」

 フィンレーがすぐに飛び乗った。

「ありがとうございます!」
 
 低姿勢のソフィア。

「助かるよ。」

 背中をなでるスカーレット。

「わーい。」

 喜ぶ小人のレクエペとケラット。
 空を飛ぶのは初めてのようだった。

ふわふわの背中にそれぞれ乗り込んで、
粉雪が舞う大空に飛び立った。

火山がある方向には、
夕日が光っていた。
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