翡翠の紋章

第28話

目を開けるとそこには王座の間があった。

誰も座っていない。

見たことあるお城の中。

いつも仕事の依頼をもらう
メンフィリア帝国の
王座の間。

たくさんの鎧が並べられており、
いつも立っている兵士はどこにもいない。

夢を見ているのだろうか。

赤いじゅうたんを先に進むと、
大きなカーテンの奥から、
両手を後ろで縛られていたスカーレットが
出て来た。

「スカーレット!?」

フィンレーは手と足をロープで縛られている
スカーレットに近づいて助けようとしたが、
それはできなかった。

王座の間の段差の前に見えない壁があった。
先に進めない。

「どうなっているんだ?!」

「フィンレー、落ち着いて。
 今は、幻想空間を見せられているのだと思う。
 ここはメンフィリアのお城に見えるけど
 たぶん違う。」

「僕たちどこにいるんですか?」

レクエペが叫ぶ。
ケラットはレクエペから離れなかった。

「その通りだ。
 ここは夢の空間。
 偽物の世界だ。」

 スカーレットを投げ飛ばしたで
 あろう1人の男が奥から出て来た。

 「ルァント?!」

 ソフィアは血相を変えて、叫んだ。

「え、何。誰?
 ルァント?」

「あの人は、父の側近よ。
 この国で
 翡翠の紋章を唯一持っている人。」

「え?!側近?
 翡翠を持ってるの?
 何、どうすんのよ。」

 何が何だかわからなくなってきたフィンレー。
 翡翠を持っているということは、
 なんでも願いが叶ってしまう。
 つまり、危機的状況なんじゃないかと
 焦った。

「ふむふむ。
 こちらから説明しなくても大丈夫そうだね。」

 ルァントは嘲笑いながら、こちらを見る。

「あなた、スカーレットをどうする気なの?」

「どうするも何も、生贄ですよ。
 メンフィリアの戦争を勝利に導くためのね。」

「戦争?!
 生贄?!」

「神にささげるのです。
 この女性を生贄として、
 メンフィリアの勝利へと。
 そして、私が王となる。」

「…何言ってるんだ。
 王様は、ソフィアのお父さんだろ。」

「テオドールは私の配下だ。
 王ではない。」

「どういうこと?
 父はどこ?
 父に何をしたの?」

 邪悪な心を持つルァントは気が狂ったように
 立ち振る舞う。

 こちらの話だと聞いてない。

右手を高く振り上げては、フィンレーたちに向かって
振り下ろした。
すると、腕につけていた翡翠の紋章が青白く輝いては、
天から雷が降り注ぐ。地面に打ち鳴らしたかと思うと、
大きな影が広がった。

空から、末恐ろしい大きなドラゴンが姿を現した。
クロマティックドラゴンと呼ばれる頭の数が5つもある
モンスターだった。

首をうねうねさせて、炎や氷、雷、水、土の魔法を
口から吐き出している。

「な?!最後のボスみたいな迫力じゃないか。」

「大きい……。」

その大きさにみんな絶句する。

「召喚獣を出してもいいですか?!」

 レクエペが鼻息を荒くさせて、興奮していた。

「ああ。もちろんだ。
 攻撃だけじゃ太刀打ちできない。
 ドラゴン召喚頼んだぞ。」

「任せてください!!」

 ケラットは黙ってうなずき、レクエペに
 続いて、召喚させる。

城の中が神々しいステージへと変化する。

ドラゴン3体とオピンニクスが
向かいあって、室内なのに
どこからともなく強い風が吹き荒れている。

鳥肌がたつくらい緊張が走っていた。
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