翡翠の紋章

第35話

クロマティックドラゴンは、
炎・氷・雷・水・土属性を持つ。
頭がそれぞれに動いている。

魔法を使えるのは、オパールの宝石を
つけているジュリアンだけ。

打撃攻撃は、フィンレー、スカーレット、
レクエペ、ケラット。

何の武器もない技もない
ソフィアは、
ただただ待機していることしかない。

召喚獣は誰に指示されなくとも、
技をそれぞれ攻撃してくれる。

これの勝算は難しいのではと考える。

こちらの攻撃をする前に
5種類の頭から、
属性ごとの炎が吹き荒れる。

炎・氷・雷・水・土で攻撃されるため、
特に抵抗力はない。
すべての攻撃で仲間たちは
ダメージを与えられた。

「くっそー。」

 フィンレーが悔しがっている横で
 ジュリアンが立ち向かう。

「俺に任せろ。」

ジュリアンは続けて次々に
魔法を繰り出した。

炎のドラゴンに
『ウィンドスラッシュ!』

氷のドラゴンに
『ファイアアロー!』

雷のドラゴンに
『ロッククラッシュ!』

水のドラゴンに
『ライトニングスピア!』

土のドラゴンに
『クリエイトシルフィード!』

とあっけにとられるくらいの
勢いで魔法をクロマティックドラゴンに
命中させていく。
見事に攻撃される前に、
大ダメージを与えることができていた。

フィンレーは、倒せなかったドラゴンに
攻撃できているジュリアンの様子を見て、
あっけにとられていた。

「俺も負けないぞ!!」

グレートソードで加勢する。
微力ながら、ダメージを与えた。

そうしてる間に、敵のターンとする。

クロマティックドラゴンは5体とも
うねうねと頭を動かしては、
それぞれの口から属性のブレスを
吹きまわした。

フィンレーたちは、
四方八方に避けていく。
軽いダメージで収まった。

ジュリアンは、繰り返し、
またそれぞれの属性の弱点魔法を
唱えた。

いつの間にか、
クロマティックドラゴンは
砂のように
パラパラと消えていく。

あんなに強かったドラゴンが
一瞬にして倒すことができた。

「やったー!倒した。
 ジュリアンやったな。」

フィンレーはジュリアンの肩に触れた。

すると、突然、左腕で、
勢いよく、振り払われた。

「なっ!?」

「勘違いするな!
 お遊びはここまでだ。」

 雰囲気が一気に変わる。

 それとともに、天井の壁が次々と崩れていく。
 建物全体がぐらぐらとなっている。
 
 フィンレーたちは、出口に向かって走ろうと
 試みたが、それは、無理に等しかった。

 ジュリアンの目が赤く光りだす。
 両手を広げて、天に掲げてから
 大きく振り上げた。

 フィンレー、スカーレット、ソフィア、
 レクエペ、ケラットの5人は、
 ジュリアンの魔法で空中に浮かびはじめた。
 
 みんな身動きがとれない。

 空間にふわふわと浮かびはじめては、
 全員、急に風が吹いたように勢いよく
 砂漠のフィールドに投げ飛ばされた。

 地面に手をついて、体を起こそうとするが、
 どんどん砂が下へと吸い込まれていく。

 蟻地獄だ。

「ちょ、これ、どういうこと?!」

「ジュリアン、なんでこんなことするの?!」

 砂の音が響く。
 
「やっとこれで、俺のしたいことができる。
 そう、メンフィリア帝国の崩壊だ。」

 ジュリアンは、ソフィアの顎をくいとあげて
 顔を拝んだ。

「なんですって?!」

「もう、終わりだ。
 メンフィリアの最期を!」

 短剣をさやから抜いて、
 ソフィアの首に剣を向けた。

 砂に埋もれたフィンレーは底力を振り絞って、
 ソフィアの元に駆け出した。

 どんな人間動物も、
 この蟻地獄は逃げ出せないと
 されているが、
 フィンレーは、その常識を破った。
 着ていた鎧を脱いで、
 シャツ1枚。
 落ちていく剣を慌てて拾っては、
 ジュリアンの短剣に
 グレートソードをあてた。

 カキンと音が鳴り響く。
 
 ソフィアの目から涙が零れ落ちる。
 頬に短剣でついた傷が斜めについた。

 ソフィアとジュリアンのいる足元は
 ぎりぎり蟻地獄にはなってなかった。
 フィンレーは、続けて、剣を振り上げては、
 さっきまで一緒に戦っていたジュリアンと
 一騎打ちしている。

「信じていたのに!!」

「人と初めて会って信じるのは
 浅はかだな。
 もっと疑った方がいい。
 うまい話には裏があると思え。」

 ジュリアンは、フィンレーに力任せに
 短剣を差し向けた。
 フィンレーはそれにこたえるように
 刺されないようにと必死で受けた。

「やーめーろー-。」

 レクエペ、ケラットが、
 ジャンプして、
 フィンレーの肩に乗り、
 そこからジュリアンに向かって
 ポコポコとパンチを繰り出した。

 スカーレットも力を振り絞って、
 這い上がってきた。

「スカーレット様を
 なめるんじゃないわよ!」

剣を振り上げて、
ジュリアンの後ろから
切りかかっていく。

ソフィアは恐怖のあまりに
うずくまっている。

4人からの総攻撃にジュリアンは、
耐えきれず後退していく。

「束になってかかって来るって!?」

そういうとジュリアンは、砂の上に倒れた。
さらにジュリアンの上にみんなが乗っかった。

短剣がポロっと下に転がった。

「メンフィリアは俺が守る!!
 そう、テオドール様と誓ったんだ。」

 ジュリアンの上に乗っかった状態で、
 胸ぐらをつかんで言った。

 ぺたんと足を曲げて、泣いていた
 ソフィアが、ハッとした。
 その言葉に安堵した。

「テオドール王も喜ぶだろうな。」

「…どういうことだ。」

「もういい。俺に役目はない。
 どうにでもしろ。」

 つかんでいた胸ぐらを外して
 ジュリアンの服を整えた。

「お前を仲間にする。
 メンフィリアを一緒に
 築くのを手伝ってくれ。」

「は?」

「フィンレー。
 殺されかけたのに、なんで?!」

「人を殺せばさらに
 また命の奪い合いが起きる。
 ここで断ち切らないと。」

 ジュリアンの体を起こした。




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