翡翠の紋章
第41話
召喚獣たちは、それぞれの技を思う存分に
出し合った。
タイムは時間を止めて、
ドュリアデスは、どんな敵の技を
跳ね返す魔法を
メンバー全員に唱えた。
ホワイトドラゴンとレッドドラゴンは、
冷気と炎の技をアメーバモンスターに出した。
相当なダメージとなる。
フィンレーは
オピンニクスに指示を出しては
風の切り裂きの技を出した。
大きな体のアメーバは宙に舞っては、
床にたたきつけた。
大ダメージとなり、
会心の一撃となった。
一瞬にして、砂のように消えていく。
おー--と悲鳴が響く。
グータッチをしては泣いて喜んだ。
攻撃されるたびに
肌が溶けそうになったが、
すぐにドリュアデスが回復魔法をして
何とか癒された。
アメーバモンスターが消えていなくなると、
目の前に小さな扉が現れた。
小人たちが入れるちょうどいい扉だった。
「俺たちにまかせろ。
見てくる!!」
「ああ、頼んだ。」
フィンレーは、のぞき込んでは、
小人たちのエクレぺとケラットを見送った。
でこぼこの岩で出来た道を進んでいくと、
扉の向こうは、四方八方に翡翠の宝石に
囲まれた部屋だった。
「おおー--!!
すごい!!
なんだ、これ。」
「なんだ、なんだ。
何があるんだ。」
中に入ることができない人間たちと
召喚獣。
気になって仕方ない。
「フィンレーさん、
この中、全部翡翠ですよ!!」
「マジか。
でも、どうやって…。」
「ツルハシで削って行けばいいじゃないか?」
スカーレットが提案する。
「崩れるだろう。
トンネルになってるから。
体が小さくなればいいんだけどなぁ。」
「私の力で何とかするわ。」
ドリュアデスは、一歩前に出て
提案する。
『スモール!!』
召喚獣以外のみんなをすべて小人サイズにして
中に入った。
エクレぺが言っていた通り、
そこはすべて翡翠で出来た洞窟になっていた。
「あとは私の出番ね。」
小さくなったソフィアは、膝をついて
両手を握った。
天に願いをささげた。
魔法を唱えた。
『アナスタシス!!』
その言葉を発した瞬間、周りの翡翠は
共鳴し合ったのか、緑色にそれぞれ輝き始めた。
目を開けていられないほどの光に包まれて
猛烈に強い風が吹いた。
その場にいたメンバーは
立っていられないほどに
吹き飛んだ。
真っ白な空間の次元に飛ばされて、
気を失った。
◇◇◇
「ここはどこだ。」
周りには白い空間しかない。
白いこと以外は何も情報は得られない。
誰もいない。
フィンレーは、佇んだ。
風も、太陽の光も、何もない場所で
ただただ、周りを見渡した。
ぼんやりと声が聞こえた。
テオドールの声のような気がした。
「フィンレー。頼んだぞ。
メンフィリア帝国の再建を。」
ソフィアの声も聞こえた。
「今日からお兄ちゃんだね。」
スカーレットの声が聞こえる。
「私が、側近なんだ。
騎士の試験は私の勝ちだな。」
レクエペの声も
「フィンレー。いや、フィンレー王。
俺は、どこまでも着いていきますよ!
でも、食事はもちろん
1日3食付けてくれるなら。」
ケラットは
「私はレクエペに着いていく。
ただそれだけ。」
オピンニクスの声もした。
「わしは、お前が王だとは思えない。
まだまだひよこのお前に
王など10年早いわ。
修行が必要だ。」
ドリュアデスも横で話してるようだ。
「いつでも私はここにいるわ。」
マージェの母が言う。
「あなたなら、できる。
私が自信を持って
言えるのよ。
私が育てた息子だから。
大丈夫、絶対大丈夫だから。」
すべて声だけが聞こえてきた。
姿はどこにも見えない。
幻想なのか。
夢なのか。
フィンレーは、目をもう一度見開くと
さっきまで無かった茶色の頑丈な扉があった。
これを開いたら
もう戻れない気がした。
後ろを振り返ろうとしたが、
首を振ってはあきらめて
ただ前に進むことだけ考えた。
観音開きの扉を力を込めて開けた。
まばゆい光が目をくらう。
額に手を当てた。
「フィンレー!!」
そこには、
声がしたみんなが立ち並んでいた。
後ろには、
崩れていたはずのお城が元通りに戻っている。
「ソフィア、さっきの魔法って…。」
「全部、元通りになったのよ。
やっぱり、嘘じゃなかったね。
翡翠の願いは届いたんだよね。」
「え?」
「その代わり、
さっきまであった翡翠は
もう、どこにもないよ。」
「最後の願いってこと?」
「新たなメンフィリアを
作ればいいってことだよ。」
「期待してますよ、フィンレー王。」
レクエペが言う。
「まだ呼びたくないけど、任せたぞ。」
スカーレットが手に腰を当てて言う。
「さぁ、さぁ。
最初のお仕事は、城下町のみんなに挨拶だよ。」
フィンレーは、ソフィアに連れられて、
お城の高台に登って行った。
「あー--、えっと…。」
人々は、フィンレーの前に集まってきた。
堅苦しい話はできない。
何を言うかなんてわからない。
「メンフィリア!!!
万歳!!!」
とりあえず、そう叫ぼうと思って
言ってみたが、一瞬沈黙になったが、
みな、思い立ったようにうぉー--と
叫んで盛り上がった。
先行きが不安になったソフィアだったが、
まぁ、いいかと半ば諦めた。
ここからフィンレーが王様となり、
平和なメンフィリア帝国が
築き上げていくだろう。
誰が、妃になるかは誰も知らない。
オピンニクスはメンフィリア帝国の城の上を
優雅に飛んで行った。
空には雲がふわふわと流れていた。
翡翠の紋章は、
もう誰も持つことはできなくなった。
持つ必要もなくなった。
欲はキリがない。
ないものねだりをしても意味がない。
今あるここの幸せを大切にするだけで
幸せになれるものだ。
【 完 】
出し合った。
タイムは時間を止めて、
ドュリアデスは、どんな敵の技を
跳ね返す魔法を
メンバー全員に唱えた。
ホワイトドラゴンとレッドドラゴンは、
冷気と炎の技をアメーバモンスターに出した。
相当なダメージとなる。
フィンレーは
オピンニクスに指示を出しては
風の切り裂きの技を出した。
大きな体のアメーバは宙に舞っては、
床にたたきつけた。
大ダメージとなり、
会心の一撃となった。
一瞬にして、砂のように消えていく。
おー--と悲鳴が響く。
グータッチをしては泣いて喜んだ。
攻撃されるたびに
肌が溶けそうになったが、
すぐにドリュアデスが回復魔法をして
何とか癒された。
アメーバモンスターが消えていなくなると、
目の前に小さな扉が現れた。
小人たちが入れるちょうどいい扉だった。
「俺たちにまかせろ。
見てくる!!」
「ああ、頼んだ。」
フィンレーは、のぞき込んでは、
小人たちのエクレぺとケラットを見送った。
でこぼこの岩で出来た道を進んでいくと、
扉の向こうは、四方八方に翡翠の宝石に
囲まれた部屋だった。
「おおー--!!
すごい!!
なんだ、これ。」
「なんだ、なんだ。
何があるんだ。」
中に入ることができない人間たちと
召喚獣。
気になって仕方ない。
「フィンレーさん、
この中、全部翡翠ですよ!!」
「マジか。
でも、どうやって…。」
「ツルハシで削って行けばいいじゃないか?」
スカーレットが提案する。
「崩れるだろう。
トンネルになってるから。
体が小さくなればいいんだけどなぁ。」
「私の力で何とかするわ。」
ドリュアデスは、一歩前に出て
提案する。
『スモール!!』
召喚獣以外のみんなをすべて小人サイズにして
中に入った。
エクレぺが言っていた通り、
そこはすべて翡翠で出来た洞窟になっていた。
「あとは私の出番ね。」
小さくなったソフィアは、膝をついて
両手を握った。
天に願いをささげた。
魔法を唱えた。
『アナスタシス!!』
その言葉を発した瞬間、周りの翡翠は
共鳴し合ったのか、緑色にそれぞれ輝き始めた。
目を開けていられないほどの光に包まれて
猛烈に強い風が吹いた。
その場にいたメンバーは
立っていられないほどに
吹き飛んだ。
真っ白な空間の次元に飛ばされて、
気を失った。
◇◇◇
「ここはどこだ。」
周りには白い空間しかない。
白いこと以外は何も情報は得られない。
誰もいない。
フィンレーは、佇んだ。
風も、太陽の光も、何もない場所で
ただただ、周りを見渡した。
ぼんやりと声が聞こえた。
テオドールの声のような気がした。
「フィンレー。頼んだぞ。
メンフィリア帝国の再建を。」
ソフィアの声も聞こえた。
「今日からお兄ちゃんだね。」
スカーレットの声が聞こえる。
「私が、側近なんだ。
騎士の試験は私の勝ちだな。」
レクエペの声も
「フィンレー。いや、フィンレー王。
俺は、どこまでも着いていきますよ!
でも、食事はもちろん
1日3食付けてくれるなら。」
ケラットは
「私はレクエペに着いていく。
ただそれだけ。」
オピンニクスの声もした。
「わしは、お前が王だとは思えない。
まだまだひよこのお前に
王など10年早いわ。
修行が必要だ。」
ドリュアデスも横で話してるようだ。
「いつでも私はここにいるわ。」
マージェの母が言う。
「あなたなら、できる。
私が自信を持って
言えるのよ。
私が育てた息子だから。
大丈夫、絶対大丈夫だから。」
すべて声だけが聞こえてきた。
姿はどこにも見えない。
幻想なのか。
夢なのか。
フィンレーは、目をもう一度見開くと
さっきまで無かった茶色の頑丈な扉があった。
これを開いたら
もう戻れない気がした。
後ろを振り返ろうとしたが、
首を振ってはあきらめて
ただ前に進むことだけ考えた。
観音開きの扉を力を込めて開けた。
まばゆい光が目をくらう。
額に手を当てた。
「フィンレー!!」
そこには、
声がしたみんなが立ち並んでいた。
後ろには、
崩れていたはずのお城が元通りに戻っている。
「ソフィア、さっきの魔法って…。」
「全部、元通りになったのよ。
やっぱり、嘘じゃなかったね。
翡翠の願いは届いたんだよね。」
「え?」
「その代わり、
さっきまであった翡翠は
もう、どこにもないよ。」
「最後の願いってこと?」
「新たなメンフィリアを
作ればいいってことだよ。」
「期待してますよ、フィンレー王。」
レクエペが言う。
「まだ呼びたくないけど、任せたぞ。」
スカーレットが手に腰を当てて言う。
「さぁ、さぁ。
最初のお仕事は、城下町のみんなに挨拶だよ。」
フィンレーは、ソフィアに連れられて、
お城の高台に登って行った。
「あー--、えっと…。」
人々は、フィンレーの前に集まってきた。
堅苦しい話はできない。
何を言うかなんてわからない。
「メンフィリア!!!
万歳!!!」
とりあえず、そう叫ぼうと思って
言ってみたが、一瞬沈黙になったが、
みな、思い立ったようにうぉー--と
叫んで盛り上がった。
先行きが不安になったソフィアだったが、
まぁ、いいかと半ば諦めた。
ここからフィンレーが王様となり、
平和なメンフィリア帝国が
築き上げていくだろう。
誰が、妃になるかは誰も知らない。
オピンニクスはメンフィリア帝国の城の上を
優雅に飛んで行った。
空には雲がふわふわと流れていた。
翡翠の紋章は、
もう誰も持つことはできなくなった。
持つ必要もなくなった。
欲はキリがない。
ないものねだりをしても意味がない。
今あるここの幸せを大切にするだけで
幸せになれるものだ。
【 完 】