ピンクの姫が無自覚攻撃を繰り出すので、ブルーの侍が困惑しています(アンジュと近藤)
細い建物を挟んだ道が途切れる場所

アンジュを挟んで、両脇に二人の男が通り過ぎようとした。

次の瞬間、
近藤の上着が、アンジュを連行している男の頭に叩きつけられた。

反対の男は、久遠に足を引っかけられて、転倒した。

秒殺だった。

近藤の手刀が、男の腹に入り、崩れるように床に崩れ落ちうめき声をあげた。

久遠のパンチが連打され、同じように別の男が床に伸びていく。

逃げようとする男の背中に、久遠の蹴りが入った。

「久遠、警察に通報を!!
私は、彼女を車まで連れて行きます」

近藤は、アンジュの前にしゃがみこむようにして、おぶった。

「いいよーー」

のんびりした口調とは裏腹に、男のポケットに入っていたロープで、てぎわよく手と足を縛っていく。

久遠は、ボクシングのプロライセンスを持っている、格闘技オタクなのだ。

近藤は久遠一人で、問題なしと判断すると、フガフガと息をあらくしているアンジュをおぶって、走り出した。

遠くで、警察のサイレン音が響く。

もう数分で、現場到着だろう。

車の後部座席のドアを開き、近藤はアンジュを座らせた。

「大丈夫、座ってください。
ちょっとだけ・・我慢してくださいね」

近藤が、ガムテープをビリリとはがすと、アンジュは大きく息を吸い、すべてを吐き出すように

「うわぁーーーーー」

大声で叫んで、近藤にしがみついて泣きはじめた。

近藤は少し戸惑ったが、そっと彼女の背中に腕をまわし、抱きしめた。

「大丈夫・・安心して・・大丈夫・・」

警官が数人、こちらに走って来る。

救急車のサイレンも響く。

近藤はそっと腕の力をゆるめたが、アンジュは震えて、激しくしがみついてくる。

救急隊員がやってきたので、近藤は片手をあげ合図をした。

それから腕時計を見て、時間を確認した。

もう、飛行機・・乗れないな。
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