ピンクの姫が無自覚攻撃を繰り出すので、ブルーの侍が困惑しています(アンジュと近藤)
その人は伯爵が出かけるのを、
カーテンの影に隠れて、そっと見送りをしたのだろうか。

「それで、この物件の話がきたのですね。
でも、うちはホテル関係の商業施設専門ですよ。
個人住宅はちょっと・・」

久遠は手をひらひらさせて

「オヤジの友達の紹介だってさ。
だから、断れなかったのだろう。
でも、場所も閑静だし治安もいい。メトロとのアクセスもいい。

商社とか、貿易関係の海外駐在、ファミリーで来ている日本人ならば、向いているよ。
すぐに法人関係で、買い手がつくんじゃないかな」

久遠は、アイアンワークの美しいつる草模様の手すりのある
石造りの階段を、トントンと上がった。

いつものよれよれ白Tシャツ、
ジーパンで素足にスニーカー。
しかし肩幅が広く、筋肉質で鍛えていることが、Tシャツを通してもわかる

その後に続く近藤は、隙の無い
紺のスーツ、臙脂のネクタイ、
細身の眼鏡男子だ。

一見すると、二人がどのような
関係なのか、戸惑うだろうが、
久遠は大手ホテルチェーンの御曹司、近藤はその秘書である。

白い野薔薇の咲く小さな前庭、
隣にガレージ、
裏庭には小さな野菜畑があるが、丈の高い雑草でおおわれている。
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