ピンクの姫が無自覚攻撃を繰り出すので、ブルーの侍が困惑しています(アンジュと近藤)
ここで生活をしていた人は、
つつましやかで自然を愛した人だろうか。

近藤はそう感じながらも、
雑草でおおわれた裏庭を歩いて、
スマホで売却用資料のための写真を撮り始めた。

近藤は理解していた。

売り手のエラール伯爵は、この愛人との関係を完全に隠ぺいしたいのだ。

それにはまず、この物件を外国人に売り飛ばして、家の履歴をロンダリングすればいい。

入居するのが外国人ならば、前の住人がどんな人なのか、興味を持つ事がないし、
近隣の住民も、異国の人間に立ち入った接触をしてこないだろう。

「そうですね。売れなければ、
日本人向けの賃貸物件として、
扱いますか?」

近藤が久遠に、お伺いを立てると

「そーだねぇ、そんなんで、いいんじゃない?」

どうでもよさげで、ややなげやりな口調に、近藤は小さく息を吐いた。

すでに、久遠はやる気がないのだ。
心はもう、恋人のエミリアのところに飛んでいる。

「ちゃっちゃと終わりにして、
すぐに帰ろーぜ」

久遠が近藤に声をかけた。

「そうですね・・」

裏庭の窓が、開いているのに気が付いた。
ここはもう、人の出入りがないはずなのだが・・
< 3 / 54 >

この作品をシェア

pagetop