ピンクの姫が無自覚攻撃を繰り出すので、ブルーの侍が困惑しています(アンジュと近藤)
「もう少しで着きますね」

近藤は時計を見て、胸をなでおろした。
ビジネスに遅刻は厳禁だ。
ましてや初対面の相手だ。

「これから会う相手は、自分の家を売りたいと言う人です。
これは仕事ですので、アンジュ、私の指示に従ってください」

さすがにそこは、わきまえていると言うように、
姫君は胸に手を当てて、うなずいた。

車を小さな空き地に止めて、
竹が連なる小道を歩く。

天に届く竹は、幻想的で3Dの
水墨画の世界を感じさせた。

足元は笹の葉の落ち葉で、フカフカしている。

「すごい、きれい・・」

姫君が竹で縁取られた空を見上げて、感嘆の声を上げた。

「かぐや姫という昔話があります。
竹を切ったら、小さなお姫様が座っていたという・・」

近藤が説明しながら、
道の行き止まりを見ると、古い家屋が見えた。

初老の男性と、二人の女性が、
庭先で段ボールを運び出している。

「お約束した近藤ですが、菅原さんですか?」

近藤が声をかけると、初老の男性が顔を上げた。

「ああ、わざわざ、遠い所申し訳ありません。
ちょうど、納戸の整理をしていて」

「お疲れでしょう。
ほこりっぽいところですが、お茶を入れますね」
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