ピンクの姫が無自覚攻撃を繰り出すので、ブルーの侍が困惑しています(アンジュと近藤)
「コンドーと一緒じゃないと、
やだぁ!!」

その声が響いたのは、玄関ドアが閉まるのと同時だった。

車の中、ツインテールの姫君は、明らかに不機嫌そうだったが、
近藤は無視して説明をした。

「ホテルで朝食を手配してあります。
そこで秘書課の山中さんという女性が、待っていてくれていますから・・」

近藤の言葉を遮るように、姫君が窓から身を乗り出して、騒いだ。

「ねぇっ!あれは・・なにっ??」

そこは地元の神社の前。

古くからあり、地元の古刹である。

おそろいのはっぴを着た氏子たちが、神輿や山車の準備をしている。

参道には色とりどりの提灯が飾られ、多くの屋台が仕込みを始めていた。

「これからお祭りですね。
夜はにぎやかになりますよ」

近藤は赤信号で車を止めると、
つい、口にしてしまった。

「その・・夜なら、仕事がないので、ご案内できますよ?」

「ホント?ホントにぃ?
えええーー!!楽しみ!!」



姫君は、車の中で足をバタバタさせて喜んでいる。

そう・・花火大会があるって・・言っていた。

安寿姫は、非業の死を遂げた。
かぐや姫は、一人で月に帰る。

それならば、最後はきれいな花火の思い出を・・持たせてやりたい。

「花火大会も見学できますよ。
それが終わったら、すぐにホテルまで送ります。
いろいろ誤解や、ウワサの種になるのも困りますから」

余計な一言かもしれないが、
一応、釘をさしておく。

が、もしかすると「ぬかに釘」状態になってしまうかもしれない。

だが、誤解や噂で、社会的に窮地に陥るのは、自分だ。

これは、あくまで接待・・なのだから。

真面目な近藤は、姫のキャハッという喜びの顔を見ると、理性と感情の天秤が揺らぐのに戸惑っていた。
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