【書籍化予定】ニセモノ王女、隣国で狩る
プロローグ
激しい雨だった。
雨は天から地に叩きつける勢いで降っている。昼間でも暗いと言われるジェヴォールの森には、まるで墨で塗り潰したような景色が広がっていた。
木々の闇に溶けそうなその暗い森の獣道を、一頭の馬が爆走していく――ひと組の男女を背に乗せて。
この深い森の中、アマリー・ファバンクは間違いなく人生最大の危機を迎えていた。
なにしろ見知らぬ男から、疾走する馬上で熱烈な愛を告げられているのだから。
男は馬を操りながら、腕の中のアマリーにもう何度目かの告白をする。
「王女様、愛しています!」
(しつこいわよ、何回言うのよ!?)
返事をしようにも、馬にしがみつくだけで精いっぱいだ。
降りしきる雨が、吸い込んだ空気と一緒に口の中に入り込む。
「ああ、私の王女様。私は貴女を奪いに来たのです」
(――っていうか、貴方誰!?)
アマリーは瞬きで雨をよけながらも、困惑して男を見上げる。
そもそもアマリーは王女ではない。
アマリーを見つめる男の黒い瞳は、病的なまでに思い詰めている。いっそ身の危険すら感じるほどに。
男は馬に乗ったまま、アマリーの身体を折れそうなほど力強く抱きしめた。
反射的にアマリーは叫ぶ。
助けを呼ぶ声は、鬱蒼とした深い森の木々の中に吸い込まれていく。
男は激情の込められた声で、熱い胸の内を吐き出した。
「リリアナ様! 貴女のためなら、一切を捨てられます」
「離して――!」
(私はなにも捨てたくない――!!)
この国の国王が考えた、リリアナ王女の身代わり計画。
うまくいきそうもないと思っていたこの計画は案の定、出だしから頓挫の兆しを見せていた。
雨は天から地に叩きつける勢いで降っている。昼間でも暗いと言われるジェヴォールの森には、まるで墨で塗り潰したような景色が広がっていた。
木々の闇に溶けそうなその暗い森の獣道を、一頭の馬が爆走していく――ひと組の男女を背に乗せて。
この深い森の中、アマリー・ファバンクは間違いなく人生最大の危機を迎えていた。
なにしろ見知らぬ男から、疾走する馬上で熱烈な愛を告げられているのだから。
男は馬を操りながら、腕の中のアマリーにもう何度目かの告白をする。
「王女様、愛しています!」
(しつこいわよ、何回言うのよ!?)
返事をしようにも、馬にしがみつくだけで精いっぱいだ。
降りしきる雨が、吸い込んだ空気と一緒に口の中に入り込む。
「ああ、私の王女様。私は貴女を奪いに来たのです」
(――っていうか、貴方誰!?)
アマリーは瞬きで雨をよけながらも、困惑して男を見上げる。
そもそもアマリーは王女ではない。
アマリーを見つめる男の黒い瞳は、病的なまでに思い詰めている。いっそ身の危険すら感じるほどに。
男は馬に乗ったまま、アマリーの身体を折れそうなほど力強く抱きしめた。
反射的にアマリーは叫ぶ。
助けを呼ぶ声は、鬱蒼とした深い森の木々の中に吸い込まれていく。
男は激情の込められた声で、熱い胸の内を吐き出した。
「リリアナ様! 貴女のためなら、一切を捨てられます」
「離して――!」
(私はなにも捨てたくない――!!)
この国の国王が考えた、リリアナ王女の身代わり計画。
うまくいきそうもないと思っていたこの計画は案の定、出だしから頓挫の兆しを見せていた。
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