辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 エルを町の人と一緒に逃がしてやればよかったのに、つい、連れたまま来てしまった。

「メルにぃに。大丈夫、大丈夫、よ」

 小さな手が首に巻き付き、そして頬を撫でてくれる。

(……そうだ。僕が守らなくちゃ)

 大切な妹。メルリノに取って、守るべき存在。

 落ち着いて、魔物の様子を見守る。

 魔物の動きに合わせて、結界を張る。こちらに攻撃をしようとした魔物が、結界に体当たりして地面に落ちる。

 何度も繰り返しているうちに、魔物にも少しずつ疲れがたまってきているようだった。

(……今なら)

 油断してはだめだと、父に何度教えられたことだろう。

 だが、エルを抱き上げたまま、メルリノも戦うのは初めてだ。知らず知らずのうちに疲労が溜まっていたらしく、足がもつれた。

「メルにぃに!」

 悲鳴みたいな、エルの声。

(ごめん、君だけでも逃げて――)

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