辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 ここにいたのがラースなら。結界魔術なんて必要ない。

 素早い動きで相手を翻弄し、力を乗せた攻撃で、魔物をあっという間に退治してしまっただろう。

 ハロンだったら? ラースほどの力はないにしても、攻撃魔術と剣術を巧みに組み合わせて魔物を撃退しただろう。

 ――けれど。

 メルリノは剣術は得意ではない。魔術だって、得意なのは直接戦闘の役には立たないもの。

「メルにぃに!」

 懸命にメルリノを呼ぶ、エルの声が聞こえる。

 ごめん、エル。

 もう一度心の中で謝った。もし、ここにいたのがメルリノじゃなかったら。きっとエルを助けることができただろうに。

 けれど、救いの手は差し伸べられた。

 エルに懐いている精霊達。フライパンと包丁。普通は調理に使うものであって、魔物退治には使わないのに。

 初めて、魔術ではなく、自分の手で魔物を討伐した。

「にぃに、すごい!」

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