辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 隊の皆からは距離を置いているみたいだけれど、小さな子には優しい――と。エルは心の中のメモ帳に記しておく。
 やがて目の前に少し開けた場所が見えてきた。三本の木にまたがるようにしてぶら下がっているのは、とても大きな蜂の巣だ。巣の周囲を飛び回っている蜂もものすごく大きい。体長は、エルの手首から肘ぐらいまでありそうだ。

「じゃあ、眠り草を焚いてください。頃合いを見計らって、僕が眠りの魔術を使います」
「はい!」

 エルが見ている前で、メルリノの指示によって手際よく地面に器が置かれる。それは香炉で、本来は香りの高い香をくゆらせるためのものなのだが、今はそこに眠り草の葉が詰められていた。

 火魔術の使える者がそれに火をつけ、風魔術を使える者が煙を巣の方に流す。巣の周りをぶんぶんと飛び回っていた蜂が、ぱたりぱたりと地面に落ちた。それからさらに巣穴の中に。

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