辺境騎士団のお料理係!~捨てられ幼女ですが、過保護な家族に拾われて美味しいごはんを作ります~
 兄の分のグラスの横には、今日おすそ分けしてもらったクッキー。蜂蜜の優しい甘さが生かされたもの。

『蜂蜜クッキー、ジャンにおすそわけ』

 瓶が欲しいとやってきたエルは、あとからこっそりジャンにクッキーを分けてくれた。辺境伯家の人間以外の騎士達が試作を分けてもらえるのは、タイミングが合った時に限る。

(兄上が生きていたら、やはり試作をもらえた時は喜ぶんでしょうか)

 ロドリゴを守って命を落とした兄は、満足だったのだろうか。

 グラスを前に問いかけてみるものの、その問いに返事はもちろんないのだった。

 

 * * * 



 辺境伯家において、ロドリゴの右腕と言えばジャンである。

 ラースが右腕と呼ばれるには、もう少し時間がかかりそうだし、きっとラースが成人したあとも、ロドリゴの意を一番上手に汲めるのはジャンではないかとエルは思っている。

(……何読んでるのかな)

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